自分なりの価値を持つということと、オチビサンの「卵焼き器」@足立区
いきなり安野モヨコさんについて語り出したのは、訳がある。
「オチビサンの卵焼き器 オトナの見学ツアー」へ参加したのです。
可愛らしいオチビサンとシロッポイが集合場所の目印でした。イラストはこの日のために、安野さんが描き下ろしたそう!
これは、オチビサンのグッズとして販売予定である「卵焼き器」の製作過程を実際に見学できるツアー。オチビサンのグッズは今までにもいろいろと販売されているけれど、素材にこだわりがあって、どれも大切に使いたくなりそうなものばかりだった。
参加者には、ネーム入りの名札が配られました。オチビサンカラーに描き下ろしイラストまで!あまりの手の込み用に、「参加費ぼったくられるんじゃ……」と不安になったのは、秘密。(※完全無料)
今回の「卵焼き器」も例に漏れず、銅製の卵焼き器らしい。
銅製と聞くと、「レストランとかで使われている職人が使う道具。扱い難しそう」というイメージしかない。そして私は料理が苦手。さらに上達しようという気概もない。
鍋やフライパンを買う時の基準は、
「どんな火加減でも焦がしてもこびりつかないもの」
一択だった。
本当にただの興味本位の私が連れて行かれたのは、足立区にある「中村銅器製作所」。
ちなみに、「中村銅器製作所」で作られている調理器具は、その質の良さから職人御用達なのだとか。「銅製」であることはもちろん、柄の角度や重さにもこだわりを持って作っているそうです。
実は、祖父母宅が足立区にある私。小さい頃には、近所にこうした小さな工場(?)が点在していて、「キュイーン」とか「カーンカーン」とかいう音が聞こえていたのを思い出した。
今はもう住人が変わりつつあって、新しい住宅がどんどん建ってしまっている。こうした風景はどんどん失われているのかもしれない。
そんなことを思っていた私の目にいきなり飛び込んできたのは、山積みの「卵焼き器(未完成)」。
ちょっとアートな絵が撮れた。
もともとは、人の背を超すほどの長い長~い銅板を切断して、
さらに、それぞれの角をさらに切断、
一面に柄を付けるための穴を開けたら、四面すべてに角度をつける。
こんな形になります。まるで折り紙みたい。
それぞれの機械たちも、昭和レトロのいい味を出しています。
こちらは角度をつける(曲げる)機械。昔のものって、どっしりとしていて威厳があるので、好きです。昭和初期のアイロンとかミシンとか。
この後に、「錫(スズ)引き」を行います。
錫メッキじゃなくて、錫を焼き付けているのが中村銅器製作所の特徴でもあるんだとか。
錫を塗りつけることで、メッキよりも剥がれにくく、銅の錆を防ぐ効果と料理の味をまろやかにする効果があるそう。
そしてこの錫引き、すべて手作業で行われていました。
何の変哲もないコンロに、「卵焼き器(未完成)」を載せて火を付けます。
錫の融点は約230℃なので、「卵焼き器(未完成)」がこの温度になるまで温める。
そして錫のバーを溶かしながら塗りつけるのですが、これが見ていてとても面白い。
(さらに暑い!!!!)
錫引きビフォア・アフター&錫。
錫引きが終わると、全体をやすりがけ。これも一つ一つをしっかり確認しながら、すごく丁寧に仕事をしていました。
そして、最後は柄の取り付け。
柄の端には、焼きゴテで印を入れるのですが、この印は、オチビサンの「丸に禿」の家紋!
「やってみる?」と誘われて、試しに入れさせていただいたのですが……難しい!!!!
みんなで焼ゴテを入れるものの、綺麗に入れるのは相当難しい。
こちらももちろん手作業なので、ひとつひとつ色やかすれ具合が違います。
どんな雰囲気の家紋がやって来るのかも、楽しみのひとつになりそうです。
ちなみに、オチビサンもこっそり隠れています。
キャラクターが全面に主張しているものは、いつか飽きがきそうで手を出しづらいけれど、家紋もオチビサンのシルエット型も、銅製の卵焼き器のシックな雰囲気を壊さないさり気なさですごく良い。
今回のツアーに参加して一番良かったことは、「モノ作り」の良さに触れられたこと。
自分が普段使っている何気無いモノたちは、どうやって作られているのか見たことが無いものばかり。
こうして製作過程を見ると、「大切に使わないと」という気持ちがふつふつと湧いてきます。
物欲が激しいけれど、身の回りをシンプルにしたくて、発作的に断捨離を敢行する私。
そもそも、愛情が芽生えたモノだけを買えばいいんじゃないの? と考えを改めました。
自分の持っているモノにそれぞれエピソードがあって、そうしたモノたちに囲まれていたら、すごく素敵な暮らしができそうだし。
モノには値段が付いていて、お金を払えば誰でも購入できる。
たくさんお金を払ったものほど捨てにくい(多々経験済)けれど、それは単なる執着であって、本当に「好き」で「自分にとって価値がある」かどうかは分からない。
もういい年だし、そろそろ値段ばかりで買う・買わないを判断するのは止めて、作り手の思いとか、買うまでの気持ちを重視していこうと決意しました。
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先日、「オチビサンの卵焼き器」の販売が始まったと報せがきたので、迷わず購入。
銅製で扱いが繊細。錫はやがて剥がれてくるから、お直しも必要。
私にはまだまだ手に余る品物だけれど、ツアーへ参加して初めて感じた「モノ作り」への思いを忘れないよう、一緒に成長して行こうと思いを込めて買いました。
いつか得意料理に「卵焼き」がラインナップされたらいいなぁ……。
……なんてことを思った一日。