煩悩パラダイス

フリーランスライターの日々の雑記帳

この後の前フリとして、安野モヨコさんについて語る@自宅

友人や知人には自分から話さないけれど、私は漫画が好きだ。

「漫画」という存在そのものが。

 

現在住んでいる部屋には漫画が日々増殖しているし、近所にある実家の天井裏(ロフト?)には本屋が開ける量の漫画が置いてある。

 

いつか一部屋を天井まで届く本棚で埋め尽くしたい。本棚には漫画とCD(あくまでCD!)、座り心地の良い真っ赤なソファと小さな濃いブラウンのウッドテーブルを置き、お気に入りのいくつかの香水(その時読む漫画に合わせてシュッとやるの)と音楽、そして絵を飾る。できればホットコーヒーも飲みたいので、キッチンが必要か? ガスコンロでなんとかなるか? ビジュアル的にNGか。

そんな野望を抱いている。

 

タイトルに入れた安野モヨコさんは、漫画はもちろんだけれど、生き様が好きな人。

いや、会ったことないから、本当の所はぜんぜん分からない。

分からないけれど、漫画やエッセイからにじみ出てくる人間性が好き。

 

当時、中学生だった私が「ハッピー・マニア」で「オトナのエロい恋愛」に衝撃を受け(※ストーリーはそれだけじゃないんだけれど、まだ中学生だった私には理解できない部分がたくさんあったのだ)、高校生の時には「ラブ・マスターX」のモデルになった場所が超絶近所でキャッキャして(※こちらも当時の私の脳では、ストーリーは難しかったのだ)、大学生の頃にもなると漫画では飽き足らず、「美人画報」シリーズ、「日記書いてる場合じゃねえよ」「ロンパースルーム」などにも手を伸ばし、とにかく安野モヨコさんの描いた(書いた)ものはすべて読んできたのではないだろうか。

 

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これらに加えて「美人画報」シリーズは今でも読む。時代を感じる部分もあるけれど、それでも楽しめてしまう内容。

 

私には、彼女がなぜこんなにも魅力的に映るのか。

10代~20代前半くらいまではイラストよりも、「お洒落な漫画家」として安野さんそのものの動向が気になっていたように思う。バリバリ働いて、素敵な事務所を構えて、洋服のセンスも良くて、美容にも精通していて。若い娘が「将来はこうありたい!」と憧れる要素だらけの人として見ていた。彼女が描いた漫画に触れられることもあって、女優やモデルよりも少しだけ身近に感じられたのも大きいのかもしれない。

 

その後、社会人として働き始めて、ようやく形だけでもオトナになった私は、安野さんの漫画にずいぶん助けられていた。仕事で悩んだり、恋愛に悩んだり、その他もろもろで落ち込んだりした時に、彼女の漫画を読むと、気分が少しだけスッキリする。そして、元気の欠片のようなものがポツポツと体に灯り始める。

この頃から「ハッピー・マニア」や「ラブ・マスターX」も繰り返し読むようになった。(この2作品は、年を取るごとに感じ方が変わるので、今でもたまに読み返す)

 

20代後半になると、若い頃とは別の感性が働き始めて、言葉に表せない感情がどんどん出てくるようになった。強いて言うなら、自我が激しくなったような、焦るような、「私がやりたいことって何よ! っていうか私って何なのよ!」みたいな。

とにかく自暴自棄というか、自分でも訳が分からない、整理のつかないモノに押しつぶされそうになっていた時、目の前に現れたのは「オチビサン」だった。

それまで安野さんのパワフルな漫画に助けられていたのが、今度はふんわりとしつつキッパリとした優しい漫画に助けられた。助けられすぎだろう。いくらなんでも。

 

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太田出版から刊行されていた「hon-nin」には、「よみよま(黄泉夜間)」が掲載されていた。作中のセリフや文章がすごく好き。

 

去年、開催された展示会「STRIP!」を見に行った時、思わず見とれて立ち尽くした一枚絵がある。

この人は、どれだけのしんどい事や、苛立ちや、怒りや、悲しみに立ち向かってきたんだろうと思ったのだ。

しばらく仕事をお休みしていたこともあったから、先入観があったのかもしれない。それでもこんなにインパクトがあって、人を立ち止まらせる絵が描けるなんて、その人の生き様に説得力が無いと無理なんじゃないか。

 

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部屋の小さな本棚に飾っている画集「STRIP!」。仕事が進まない時の気分転換にすごく重宝してる。ちなみに、隣は「the COVETEUR」という海外のお洒落野郎のクローゼットを集めた画集(?)。

 

一人で熱くなってしまい、会場の出口付近で売られていた版画に手が伸びた。

「私は、これを買わねばなるまい」

そうして金額を目にして、冷静になる。

フリーランスとして仕事を始めた私には、ちょっぴり怖い金額だった。

泣く泣くポストカードで我慢をした。

 

それでもいつか、あの版画を買おうと決めている。

そう、私の野望が叶った時に、部屋に飾る絵にするのだ。

 

……そんな愛を語りまくった一日。