煩悩パラダイス

フリーランスライターの日々の雑記帳

夏の夜をフルコースで@表参道~渋谷~新宿

夏が終わるなあ。

今年は残暑が厳しいと言われているけれど、あくまでそれは「残暑」であって夏ではない。

 

私は夏が大嫌いだけれど、夏の夜だけは大好きだ。

人工の灯りで照らされる湿気だらけの街を見下ろしたり歩いたりすると、言いようのないワクワクした気持ちが込み上げてくる。

蒸し暑い熱気が残る夜が、私のテンションを上げてくれるらしい。

 

もちろん、昼間のうだるような街へ出かければ、「ビールが飲みたい……!」と思う。そして、本能のままにビールを飲んでみるけれど、美味しいと思うのはいつも最初の一口だけ。

雲ひとつない青空に、強烈な日差し。そして、それらを彩るかのような昼間のアルコール。開放的な笑顔の人たちと一緒に、それらを楽しんでみるものの、私にはどこかチグハグとしていて、なんだかいたたまれなくなってしまうのだ。

そして、残りのビールを一生懸命飲み干して、急いでその場をあとにする。

 

そんな私が、本当に心の底から満足できるのは、夏の夜のアルコール。

昼間の熱が残る湿った空気と、体力を奪われて少し疲れた人たちと、ぬるいビールに音楽。夏の夜にしかない気だるくて不思議な雰囲気に、ふだんはできない話でも、ついついあけっぴろげに披露してしまう。

直接的な昼間の暑さよりも、じんわりとした嫌味のある夜の暑さのほうが、性に合っているようだ。つくづく根暗なんだな、私。

 

「オマエはいつも高すぎるハイヒールをはいてあっぷあっぷしているのに、それを必死で隠して平然と早足で歩いている。でも、分かる人には分かる。バレてるよ」

そんな言葉にいつもなら、

「うるさいバカ。知ったふうなこと言ってんじゃねーよ」

と返すはずなのに、

「そうなんです。髪を振り乱して半狂乱になっているところを見られるのが恥ずかしいのです。内面的なトコロまで、あまり入ってきて欲しくないのです」

と素直に認めてしまう。

 

きっと、熱と湿気とアルコールで脳がやられてしまって、嘘とか見栄とかを考えることができなくなってしまっているのだ。

馬鹿話に笑い話や昔の話。さんざん喋り尽くしてふと外を見れば、群青色の重たい夜空に少しずつ自然光が入り始めている。

この夜空が私にとっての「お開き」で、タクシーを捕まえる時間。

そうして最後の〆に、タクシーの中から見る午前4時の夏の夜空を味わいながら眠りに落ちる。

 

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これが私の「アルコール編・夏のフルコース」なのだ。